書評:ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟2』光文社古典新訳文庫 

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カラマーゾフの兄弟2 (光文社古典新訳文庫)
ドストエフスキー 亀山 郁夫
光文社 2006-11-09
おすすめ平均 star
star5★歴史的大作の大審問官を現代日本で読み解くメモ■誰もが「白い巨塔」の里見になれるわけじゃない
star2つのとても重要な話
star(;//Д//)<イワンの大審問官も収録されているわよ・・・
star神の存在。
starみんな少し誉めすぎでは?長過ぎてかったるいよ!

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by G-Tools , 2008/04/06




ドストエフスキーの小説の特徴は、多声性と言われる。登場人物に作者の意見を語らせない、登場人物一人一人が作者から独立した人格、哲学を持っていると言われる。こう堅苦しく書くと、ドストエフスキーの小説の面白さというか異常さが伝わらない。ようするに、登場人物一人一人の個性が強烈、異形の人々が壮絶な極論を語り合う、悪も善も濃度がものすごい、こんな極論書いてちゃやばいんじゃないのという三流ゴシップ雑誌も青ざめるインパクトある話が次々と出てくる。

現代から見てもいっちゃってる人が次々出てくるから、19世紀当時はもっと面白かっただろう。ドストエフスキーと同時代に並び立ったロシアというか世界の巨匠トルストイも善悪の対立を描いたけれど、ドストエフスキーが悪を描く時の迫真さというか、善に対立する側の登場人物が持っているエネルギー、存在感、異常さが完全にいっちゃっている。神に立つ側の登場人物がぼろくそに批判される。フランス、イギリス的な近代の普遍性、科学万能の合理主義、拝金主義、急進的社会主義、「知性」、ローマ・カトリック、イエズス会が一方にあり、ロシアの個別性、土着の風習、「愚鈍」、ロシア正教の素朴な信仰が他方にある。近代化途上にあるロシアに突入してくる様々な異物を前に、人間が抱える愚鈍さが小説内に溢れかえる。どんなに神がかっていても、善なんてちっぽけなもので、善に対立する側の方が精力絶倫で強すぎる。これだけ痛めつけられて、嘲笑のまととなった信仰はどうなるのか。善なるものは徹底的に弱く、小さい。いやでもドラマが盛り上がる。

高校の国語教師は、世界文学の中でトルストイとドストエフスキーという大きな山があるけれど、ドストエフスキーの方がトルストイより一回り大きいと言っていた。僕は、敬愛するナボコフが、ドストエフスキーのことめっためたに批判しつつ、トルストイを大絶賛しているのを読んできたからか、構成が異常なドストエフスキーは好きになれなかった。今回の新訳でドストエフスキーの評価が変わった。ドストエフスキーの小説には民衆、貧しい人がたくさん出てくる。古い訳では、彼らは江戸時代の百姓言葉で話す。堅苦しい文体で訳されている本文の後に「だべ」とか「そうでごぜえます」とか出てくると、ものすごく違和感あり、拍子抜けで、受け入れられなかった。一方、トルストイ作品では、大貴族たちが織り成す社交界の描写の方が多いから、格調高く訳されている本文と会話文のスタイルが調和しており、すんなり受け入れられた。今回の新訳では、召使や貧しい人々も現代口語でテンポよく喋るし、本文もアカデミックでなく、前に前に話を進める躍動感がある。

2巻には大審問官の章がある。対比されるゾシマ長老の物語よりも、再臨したキリストを火刑に処そうとする大審問官の方が有名であり、話に魅力がある。

Comments

はじめまして

今日はじめて読ませていただきました。
なかなか読み応えのある文章ですね。
私も若い頃ドストエフスキーは全て読みました。
すごい作家ですね。同じ人間とは思えないほどです。
私もつまらない小説を書いています。
もし良かったら読んでみてください。

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