書評:アジェンデ『精霊たちの家』
ガルシア・マルケスの『百年の孤独』は、フォークナーの手法のパクリと言われた。『精霊たちの家』は、『百年の孤独』のまんまパクリだと言われるが、ラテンアメリカ文学の傑作として名高い。『精霊たちの家』は『百年の孤独』同様、近代化の過程にあるラテンアメリカの、100年に渡る一族の暮らしが描かれる。
僕は『百年の孤独』より興味深く読めた。作者のイザベル・アジェンデが女性であるから、女性の視点が多い。アジェンデはしかも、CIAもからんだ軍事クーデターによって倒れた、チリのアジェンデ大統領の姪にあたる。前世紀末からクーデターが起きるまでのチリを描いたこの小説は、当然作者の特異な経験が織り込まれていると想像される。学生の頃この小説を読もうと努力したけれど、挫折していた。今はアジェンデ大統領とか、9月11日に始まったピノチェトによる独裁政権の存在を知るようになっていたから、最後まで読み通せた。
物語の中心に来る美女一族と結婚した男、エステバン・トゥルエバは政治家になり、チリ政界の中心で活躍する。当然エステバンは、アジェンデ大統領をモデルにしているのかと思いつつ読んでいたが、最後で彼は軍事クーデターで暗殺された大統領とは別人だとわかった。エステバンは共産主義が嫌いな保守主義者で、改革派を排除しようと奔走するのだが、いざクーデターが起きて、革新派の大統領が死に、軍事独裁政権が始まると、独裁のあまりの酷さに辟易する役目を負っている。
ヨーロッパの小説はヌーヴォーロマンとかポストモダン小説とかどんどん難解になり、読者を失っていったけれど、二十世紀ラテンアメリカの小説は、読みやすいし、精霊や化け物がたくさん出てくる。精霊たちと暮らす人々がヨーロッパ流の近代化に直面し、独裁政治や内戦に翻弄される。こうしたラテンアメリカ文学の面白さも、21世紀に突入した現在では過去のものだけれど、読まずにいるのはもったいない。
- [2008/06/30 23:53]
- 書評(人文科学) |
- Trackbacks(0) |
- Comments(0)
- Permanent URL |
- TOP ▲
Trackbacks
Trackback URL
http://sidehill.blog22.fc2.com/tb.php/318-d97e6b25
- | HOME |


パワーが必要
歴史は巡る


Comment Post