ヴァージニア・ウルフの最高傑作と呼ばれる1925年の作。やっぱり文学は二十世紀前半が、いろいろな意味で絶頂にあったと思える素晴らしい小説。この小説では、登場人物が見ていること、考えていること、意識に上っていること全てが流麗な文章で綴られていく。実験的に使われていた「意識の流れ」という手法が、見事に活用された成功作と評価されているが、「意識の流れ」と言えば、ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』の方が評価されている。
ジョイスの『ユリシーズ』と比較して目に付くのは、品の良さだ。『ユリシーズ』の中には、冴えない男の心に渦巻く欲望の裏の裏まで描かれている。この小説でも、女性や男性が抱える、表立っては言葉にできない意識の流れが描写されるけれど、『ユリシーズ』のアナーキーさに比べれば、品がよくて堅苦しい。二十世紀初頭の女性が抱える不自由さを考えれば当然の開きかもしれないが、文学はやっぱり下品と罵倒されるタブーを描くことが重要だと思えたし、同時にこうした上品さ加減が好ましく思えた。
ロンドンに暮らすスノッブな女性の友人周りの日常が描かれるのだけれど、全然平凡じゃない。個人の意識の流れの中で、国家、戦争、王族、文化、無神論、人間性、哲学等スノッブ好みの話題が綴られていく。ああ古きよきモダニズム。この後文学は、実験的手法に溺れてどんどん不可解な代物に成り代わっていくのだけれど、「意識の流れ」の成功作と言われる当作品は、実に読みやすくて強さがある。