名前を書いた者を殺すことができるデスノート物語の最終巻。デスノートの保持者キラの正体は、夜神ライトだという証拠を、Lの後継者ニアが突きつける。夜神は、普通の人間なら私利私欲のためにしかデスノートを使えないが、自分は腐った世の中をあらため、真の平和、理想の世界を築くために、人間を正しい方向に導くためにデスノートを使ってきたのだと演説する。自分は新世界の神だという夜神に対して、ニアの決め台詞「あなたはただの人殺しです」。
人を殺しまくっている夜神ライトが主人公で、夜神ライトを追い詰めるもう一人の主人公、Lも物語の途中で殺されちゃって、善も悪もないという世界観だったけれど、12巻にわたる物語の最後で、作者の立場はずっとL、ニアの側にあったんじゃないかと思わせる決め台詞だった。
私利私欲のためにデスノートを使い、何人か殺してしまう人間の方がまだ理解できるし、まともだとさえ思う、あなたはクレイジーな大量殺人犯です。これは登場人物たるニアの言葉でしかないけれど、夜神ライトが新世界の神になるラストよりもよかったと思う。正義と善悪の問題をテーマにする青年漫画じゃなく、あくまで心理戦をメインにした少年漫画なんだけど、原作者は、ゴールデンタイムのアニメ放送は、人が死にまくる物語だからよくないと断っていたというし、作者なりの信条が見えた。
思想信条の議論なら、専門の本を読めばたくさん書いてある。これは正義を論じる哲学書でなく物語だ。夜神とニアの論争を聞いた後、今まで夜神ライトを正義の味方だと信じていた松田が、夜神に発砲したシーンが印象的だった。ニアの話を聞いて、松田の考えが変わったのだ。他者の言葉や行動によって、多くの人の行動や人生が変わる。物語の醍醐味は、他者の言葉や行動、暴力に翻弄される、普通の人々の行動の変化を描写していくことだと気づいた。