【文学・哲学エッセイ・サブカルチャー評論】7代後の孫への話Blog

I will not serve that in which I no longer believe, whether it call itself my home, my fatherland.

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元厚生省事務次官を暗殺するテロリズムと、駅前で路上の人を殺傷するテロリズムの相違点 

11月18日午前10時15分頃、埼玉県さいたま市に住む元厚生事務次官の夫妻が殺されているのが見つかり、110番通報された。同日午後6時半頃、東京都中野区に住む元厚生事務次官宅で、妻が何者かに刺された。狙われた二人はともに年金局長経験があり、年金に関する恨みがこのテロルを引き起こしたと推測されている。この他にも、何人かの厚生省局員には脅迫が届いているそうで、アメリカではオバマ暗殺が噂されているが、日本では年金、医療保険がらみの殺傷事件が続きそうである。

救急車に乗ったまま、何個もの救急病院をたらいまわしにされ亡くなった妊婦。年金の支給額が少なく、困窮する老人。医療費高騰と保険額高騰の二重苦。年金記録を改めると言って、一切改まらない官僚的不条理。こうした不可思議な事件の積み重ねが、テロルを生み出した。テロルが生まれる前は、決まって理解不可能な事件が続くものだ。テロリストは、社会にいらだって、テロルを引き起こすのである。

もちろん殺された人個人に罪はなく、殺人の暴力行使が許されるはずもない。こうしたニュース、というかこのサイトでも時折記述してきた、繰り返される不条理ニュースの洪水にひたっていると、社会は不条理だという20世紀哲学的テーゼが、21世紀でも反復されるのを実感する。

殺人と、それに連動する脅迫。無差別殺傷事件が起きた時も、殺人と脅迫が連鎖していた。無差別殺傷事件は、時代の象徴のように思えた。かつてなら人は、敵をはっきりとした個人として見出し、政治家など権力者の暗殺を狙ったものだった。今やはっきりとした敵は見えがたい。格差社会の低賃金、派遣労働の苦労、異性にもてないこと、自分の身にふりかかる不幸の究極原因を、当時の内閣総理大臣にぶつけることはできない。わが身の不幸の原因は、内閣総理大臣にありそうもない。「誰でもよかった」と無差別殺傷犯は言った。彼らは社会に向けて刃を振り下ろした。見ず知らずの他者だが、社会の構成員である、繁華街を歩く人々。路上の人たちは自分の仲間ではない。敵である。自分に対して直接的な攻撃は仕掛けてこないが、自分をこの悲惨な状況においこんだ敵なのである。不確実な「誰でもよかった」敵に対する怒りから、無差別殺傷は生まれたが、今回は敵がはっきりしていた。

年金制度を作り出し、維持してきた人、運営をしてきた人、年金を横領してきた人、管理不徹底だった人、反省すると言いながら改革の進んでいない組織、こうしたはっきりとした敵を認識できたから、テロリズムの実行犯たちは、厚生省に襲いかかったのだろう。時代は敵が不確かな無差別殺傷社会から、大恐慌およびファシズムが吹き荒れる20世紀初頭的な、テロルと総力戦争の社会に舞い戻るのだろうか。20世紀初頭アメリカから発生した大恐慌は、めぐりめぐってヒットラーを生み出したが、サブプライムローンはまた世界のどこかで、ヒットラーを生産するのだろうか。

僕たちをこんな酷い目にあわせたのは、政治家と官僚、偉い人たちのせいなんだと、「はっきりとした敵」を意識した瞬間、テロリストは繁華街の駅前で無差別殺傷事件を起こすのをやめて、政治家暗殺に赴くことになる。オーストリア皇太子は、21世紀にも撃ち殺されるのだろうか。ケネディー大統領はまた、暗殺されるのだろうか。ヒトラーはまた、戦争に負けて自殺するのだろうか。

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[ 2008/11/19 00:00 ] 国内ニュース論 | TB(0) | CM(0)
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