BS世界のドキュメンタリー・シリーズ和解への模索『エルサレム 二人の少女 自爆テロ母たちの対話』(2007年 フランス EJH プロダクション制作)を見た。
2002年3月、エルサレムの市場で自爆テロが起き、17歳の少女ラヘルが亡くなった。自爆テロを起こしたのは、ラヘルと同じく1984年生まれの18歳の少女、アヤトだった。イスラエルに暮らすユダヤ人のラヘルの母と、パレスチナに暮らすアヤトの母。ドキュメンタリー番組は、二人の母親の対話を試みる。
番組を見て想起されるのは、厚生省元事務次官の刺殺事件だった。年金テロと表現されるそれは、犯人の動機に飛躍があると指摘されている。犬が殺されたからといって、何故直接関係もない事務次官の妻まで殺すのか。こうした批判は、パレスチナの少女に対する自爆テロ事件にも適応される。パレスチナがイスラエルの占領下にあるからといって、何故直接関係ない少女までテロの犠牲となるのか。あなたは自爆テロをしてまで、イスラエルの市民に報復する必要はあるのか、と。
元厚生事務次官宅を襲撃したのは、小泉容疑者単独犯でないかもしれないから、小泉容疑者の資金源まわりについての捜査がすすまないと、日本の事件について確定的なことは述べられないが、イスラエルで毎日起きている自爆テロについては、ある程度まとめて考察することができる。同時に、日本人がイスラエルで起きている自爆テロについて考える時、自爆テロの起源としてある、日本赤軍によるテレアビブ空港でのマシンガン乱射事件の存在を忘れてはならない。
番組中盤、ラヘルの母は、パレスチナの少女の話を聞きに行く。自爆テロを実行しようと決意していたが、差し控えたという少女は、ラヘルの母に対して、私たちはイスラエルに迫害されていると言う。自爆テロによって子どもが殺されたら、イスラエルの人々も胸を痛めて、自分たちがいかに酷いことをしてきたかわかるだろうと主張する。ラヘルの母は、アヤトという自爆テロ実行犯の少女を知っているかと娘たちに聞く。娘たちはアヤトを知っていると言う。そう確認したうえでラヘルの母は、自分はアヤトの自爆テロによって、娘を殺されたのだという事実を娘たちに告げる。自爆テロが正しいことだろうかと語る自爆テロ犠牲者の母に対しても、娘たちの主張は変わることはない。あなたたちの宗教は殺しを認めているのかという質問には、これは報復だと答えられる。激論を交わした後、ラヘルの母は、イスラエル政府の占領政策、過失については何も語らないまま、対話が成り立たないと言って嘆く。
番組の最後、ついにラヘルの母とアヤトの母の対話が、テレビ中継を通して実現する。ラヘルの母は、友好的対話を望んでいた。友好的対話が成り立つためには、アヤトの母が、娘の自爆テロ行為は間違っているとラヘルの母に謝罪することが必要だったのだが、もちろんアヤトの母は、娘の死は正しいと思っている。アヤトの母は、対話が始まってすぐ、イスラエルの占領政策を批判する。突然パレスチナの地にやってきて、建国し、パレスチナ人を追い出したイスラエル。イスラエルは、パレスチナにミサイルを落とし、国も、住む場所も与えない。こうした現実を前にして、私の娘は自爆テロを行った。こう言うアヤトの母に対して、ラヘルの母は、あなたたちは何もかも占領のせいにすると批判する。
二人の対話は全く成り立たない。かたくなに占領政策を批判するアヤトの母と、かたくなに、何もかも占領政策のせいにするなと主張するアヤトの母。こうして番組は終わる。
ラヘルの母は、平和を望むのはいいが、暴力はいけないと主張する。これはテロ行為に対して、「西側」の社会で繰り返される論理だ。元厚生事務次官刺殺のニュースでも、暴力はいけないと繰り返される。しかし、パレスチナの人にとっては、暴力の行使でなく、報復なのだ。イスラエルが暴力的に自分たちをパレスチナの地から追い出したから、ミサイルを打ち落としてくるから、報復として自爆テロを行う。イスラエルの市民には、暴力の一方的な行使と見えるものが、パレスチナの人にとっては、イスラエルが振るってきた暴力に対する報復と認識される。暴力はいけないと批判するお前たちの方こそ、最初に暴力をふるってきたのではないかという反抗。この認識の相違をイスラエルの人が認識しないかぎり、パレスチナ問題は永続するだろう。しかし、イスラエルの人はそうとは認識できないだろう、自爆テロを報復であると認識してしまっては、イスラエル建国の意義が崩壊してしまうのだから。
小泉容疑者が語る、家族を殺されたことに対する報復としての元厚生事務次官殺し。私たち社会の側の論理からすれば、暴力はいけない、犬を殺した人と、犠牲者となった元厚生事務次官は直接関係ないと批判されるべき行為だ。これは、イスラエルの人にとっての自爆テロ認識と同じではないだろうか。自爆テロは暴力だ、暴力はいけない、犠牲者となった少女と、あなたたちの住む地域に爆弾を落とす政府は、全く異なるものだという主張との同一性。
小泉容疑者は、バックにある組織の鉄砲玉ではないかという疑惑がある。警察出頭時、証拠品を全て持っていくという手口が、鉄砲玉の王道なのである。小泉容疑者がどこから収入を得ていたのか判明しないかぎり、犬の死と刺殺事件は決定的に結びつかないが、イスラエルでは、イスラエルの人から見れば、論理的に結びつかない、暴力としか見えない、自爆テロが続いている。日本人にできるのは、事実を認識し、何かしらの発言を行うことだけだろうか。
個人的には今回の事件は
某カルト教団が深く関わっていると考えています。
容疑者と直接関与があるかどうかは別にしても
供述はとても納得できるものではありません。
的確に元厚生事務次官を調べていたり
(一個人が簡単に遂行できるシナリオではない)
無職なのに家賃の滞納がなかったり
(鉄砲玉、出頭要員として飼われていた)
「10人殺すつもりだった」と言いながら
2人で出頭していること等々‥
(指名手配もされてないのに‥)
陰謀論と言われてしまえばそれまでですが‥
「ペットの恨み」‥これはナシでしょう‥。
こんな理由でわざわざ「元厚生事務次官」を狙うというのは
ちょっと不可解すぎではないでしょうか?