【文学・哲学エッセイ・サブカルチャー評論】7代後の孫への話Blog

I will not serve that in which I no longer believe, whether it call itself my home, my fatherland.

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連載小説『無差別殺人と極刑のイマージュ』14 

この夜のうちに2つ分連載をあげたかったですが、今日はこの一話のみとします。自分は何のために小説を書いているのか。こんなことを書くために小説を書いているわけじゃない。こんな作品を作るために生きてきたわけじゃない。そのようにネガティブな自己批判に落ち込まないように、ポジティブに、自分の能力の極限まで、アンモラルでディストピアな物語を書くことにしてみます。そう思ってみると、まだまだ全部書ききれていない。もっともっと邪悪で救いようのない社会を描かないと。




連載小説『無差別殺人と極刑のイマージュ』


14


 少年はパトカーに乗車させられ、警察署かどこかに運ばれていった。
 救急車が何台も駅に駆けつけ、何名もの負傷者がタンカで運ばれていった。
 何名かの通行人は携帯電話を取り出し、惨劇の様子をカメラ撮影をしていた。
 撮影をとがめる良心的な中年もいたが、携帯電話をかざした若者は、中年の側から離れると、また携帯電話を事件現場に向けて撮影を再開した。
「お前の忠告も馬鹿にならないな」
 郵便局員が現れた。
 いつも整えられた制服は皺だらけで、ひざのあたりなど擦り切れている箇所もあった。
「事件に巻きこまれたのか?」
「配達バイクと郵便物はお陀仏になった」
 郵便局員が感情のない顔で軽く笑った。

 朝の通勤ラッシュの時間だったが、電車の運転は一時見送られた。
 駅前ロータリーと駅構内には警察の鑑識課が現れ、事件の証拠を丹念に記録していった。
 当然郵便ポスト周りも調べられた。
「あいつは俺に犯行予告をした」
 汚いものをさけずむ目で僕をみつめる係の者に、僕はそう言ってやったが、まるで相手にされなかった。
 一、二時間ばかりすると、改札に電車の乗降客が通るようになった。
 切符販売売り場の壁にはワゴン車激突の跡があり、死傷者が出た場所は立ち入り禁止となっていたが、電車と乗客がいつも通り動き出した。
 改札前に置かれた液晶テレビには、この場で起きた惨劇を伝えるニュース映像が流れた。
 事件の実行犯が少年だったと語る高宮藤尾の顔はいらついていた。
 
 二、三日もすると、駅前は前と事件など何も起こらなかったかのようにまわり始めた。
 事件現場に花が添えられる様子が時たま見られるようになっただけで、通勤通学の人たちは、相変わらずやけに忙しそうだった。
 僕はやることが観察することくらいしかなかったので、人々の様子と、事件の真相に迫ろうとするニュース映像を見続けた。

 ある日、郵便配達員が大きな配達袋を持ってやってきた。
「なんだ、そんな袋持ってきて。今日も郵便物なんて一つも入ってないぞ」
「お届けものだよ」
「僕宛にか?」
「お前宛に郵便物が来るわけなどないだろうが」
 郵便配達員は、袋を縛っていた紐をゆっくりほどいた。
 厚い布製の袋の中から、汚れたTシャツにブリーフ姿の少年が現れた。
 彼は僕の部屋に現れた幽霊のような少年であり、無差別殺人事件の実行犯と同じ顔でもあった。
 少年は疲れて眠っているのか、意識を失っているかで、目を閉じて生気がなかった。
 身体中に青い痣があった。
 特に顔は誰かにとことん殴られたかのように腫れていた。
 
 郵便配達員は、少年の体を僕の隣においてある古い木製のベンチの上においた。
 僕が郵便ポストに縛り付けられてからというもの、ベンチに座る人はいなくなったので、人が座る様子を見るのは久々で楽しかった。
「ここにおいていくつもりか?」
 僕は袋を丁寧に折りたたんでいる郵便配達員に聞いてみた。
「置き去りにはしない。もうすぐ係の者がやってくるから安心しろ」
 郵便局員が鼻で笑った。
「極悪犯の貴様でも、人の身体を心配することもあるんだな」
「何度も言うが、僕は人殺しをやっていない」
「お前らの意見など、誰もまともに聞かないことくらいわかってるんだろう?」
「お前なんて、まともな人の意見さえも、聞く気がないんじゃないか?」
 郵便局員は笑って答えなかった。
[ 2008/12/02 00:37 ] 小説「虐待と監禁」 | TB(0) | CM(0)
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